映像の安全性に関する国際標準について

(1)国際標準について

私たちの身の回りはいろいろな物で溢れています。たとえ同じ物であってもカメラなどにはたくさん種類があります。しかし、どのメーカのカメラであっても、その型式に合う物であれば、どこのメーカのフィルムを入れても使うことできます。もしカメラ毎に特別なフィルムしか使えないとしたらどうでしょうか? それはたいへん不便な状況になります。乾電池もそうです。どの国へ行っても、電池はみな同じですので共通して使えます。便利であることは言うまでもありません。

このように、物を作るときには共通にしておくと大変便利なことがたくさんあります。これが標準です。「ものづくり」のルールと言えるでしょう。世界中を対象とした標準、つまり国際的なルールを「国際標準」と読んでいます。この国際標準を作っている一番大きな組織はISOとよばれ、英語の正式名称はInternational Organization for Standardization となっています。


(2)国際標準とは何か?

国際標準とは国際的に合意された「ものづくり」やサービスのルール、ガイドライン、性質の記述などのことを言います。作成するのは国際標準化機構(ISO)や国際電気標準(IEC)であり、通信関係については国際電気通信連盟(ITU)というものが主な団体です。各国の代表者が参加して、技術的、社会的影響などを検討して合意すべき事柄を決めていきます。

国際標準は、国際間の物の販売などでは大きな影響力を持っています。WTO(国際貿易機構)ではTBT協定と言う規則があり、貿易上のさまざまな問題を解決するときに国際標準を優先するよう取り決めています。例えば、国際標準に沿って開発した日本の製品を輸出するときに、相手国が自分の国の標準(国内標準)に合わないからと言って拒否するようなことは禁じられています。従って、国際標準に沿うこと、あるいは沿えるような標準を決めていくことは非常に重要なことなのです。


(3)国際標準の必要性と目的

国際標準は、放っておけばバラバラになってしまうものを、規則を作って製品の統一や流通の促進などを行うものです。国際社会を迎えた現代に必要不可欠な社会システムであることは言うまでもありません。さらに、具体的な4つの目的は次の通りです。製品やサービスの「互換性の確保」、「品質の保証」、「安全性の確保」、「試験・評価方法の統一」をすることです。

対象は大変多岐にわたり、鉛筆や文具など毎日の生活に必要な身の回りの物から、原子力などエネルギーの根幹に関わる技術まで、ほとんどの分野が含まれています。

ポケモン事件で引き起こされた映像の問題は、まさに「映像の安全性の確保」が必要とされる事例です。まだ国際標準は完成していませんが、映像の作成や放送、さらに頒布をする上で安全上の標準を作ることは、一般の消費者や子どもたちが安心してアニメやゲームを楽しむ環境をつくるためにも非常に重要で、必要な課題なのです。


(4)国際標準の現状

ポケモン事件や英国でのコマーシャルによる発作の事件以来、放送やゲームの映像の安全性を確保するために、映像の制作方法や放送技術に関する標準化が必要であることが叫ばれてきました。国際電気通信連盟(ITU)では早くから検討が進み、最近(2005年2月)になってガイドラインが制定されました。

しかし、このガイドラインの対象となるのは放送関係の映像のみであり、しかも映像によって引き起こされる障害の一部(光過敏性発作)だけですので、まだ十分ではありません。

そこで、ISOでは2004年12月には日本が中心となって、より一般的な安全性の国際標準を作るために映像関係者を集めた国際会議(ワークショップ)を東京で開きました。人々の健康被害をなくすために関連する問題はたくさんあり、まだまだ議論は十分とは言えませんが、「映像の安全性は重要である」という認識は共通に持つことができました。その時の合意文書がIWA3としてISOから2005年に出版されました。

このIWA3の共通認識に基づいて、2005年に、国際照明委員会(CIE)に科学的データを集積し技術文書として発行するための技術委員会が、また、2006年には、ISOに映像による健康被害をなくすためのガイドラインづくりについて検討を行うスタディグループが設置されました。このスタディグループでは、これまでに集積された科学的データをもとに、2008年までに、どのようなガイドライン作成が可能かを検討することになっています。


(5)今後の予定

ISOのスタディグループが2008年までに議論する内容を受けて、それ以後、ガイドラインの国際規格化が進められることになります。そこでは、技術的意見、産業界の意見、ユーザーである消費者側からの意見を調整しながら、よりよい規格作りが進められる必要があります。ここでは、映像産業技術の優れた日本が中心となって進めていくことになるでしょう。

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国際標準とは何か について説明します。